転換社債に投資する意義:保険会社ポートフォリオにおける役割

マニュライフ | CQS インベストメント・マネジメント
ジェームス・ピアティー
グローバル転換社債戦略ヘッド

マーク・レイサム
ポートフォリオ・マネージャー、 グローバル転換社債戦略副ヘッド

マニュライフ・インベストメント・マネジメント
エミリー・パケ、FSA
ストラテジック・イニシアティブ・アンド・イノベーション・ヘッド
マルチ・アセット・ソリューション・チーム

ニコラス・スキピオ・デル・カンポ、CFA
ポートフォリオ・マネージャー
負債対応投資(LDI)戦略ヘッド、米国・アジア地域
マルチ・アセット・ソリューション・チーム

今日の金融情勢において、適切な投資手段を見極めることは、特に保険会社のポートフォリオにとって、継続的な課題となっています。転換社債は、保険ポートフォリオにさまざまなメリットを提供し、正しく選択・運用すれば、債券と株式の両方のメリットを融合したユニークでさまざまなニーズに対応できる資産クラスとなると考えます。本稿では、転換社債の仕組みと、それが保険会社に特に適している理由について考察します。

歴史的に保険ポートフォリオの大部分を占めてきた伝統的な固定利付証券は、変化する市場環境に対応するために必要なリターンを提供するには不十分な場合が多くあります。そこで、債券の安定性と株式の成長性を併せ持つ金融商品である転換社債が特に注目されています。これらの金融商品は、保険ポートフォリオのパフォーマンスを大幅に向上させうるユニークなメリットを提供します。

転換社債とは

転換社債型新株予約権付社債は、あらかじめ決められた価格で一定数の発行会社の普通株式に転換できるタイプの負債証券です。債券と株式の両方の利点を兼ね備えており、定期的なクーポン収入と、原資産である株価が上昇した場合の価格上昇の可能性を提供します。

この二重の特性は、転換社債の特徴である、ダウンサイド・プロテクションに加えてアップサイドも享受できるという特徴をもたらします。このペイオフ・プロファイルは、債券の本源的価値とその中に組み込まれた株式オプションとの組み合わせから生じます。この組み合わせにより、非対称なリターン・プロファイルが得られ、転換社債は、ダウンサイド・リスクと比較して、より大きなアップサイドの可能性を提供することができます。

主なメリット

  • 分散:転換社債は債券市場と株式市場の両方の影響を受けるため、他の債券との相関性が低くなります。転換社債は、他の債券パフォーマンスが軟調となるときに好調に推移する傾向があり、その逆もまた同様であるため、ポートフォリオ全体のボラティリティとリスクを低減することが可能であると考えられます。
  • アップサイドの可能性:転換社債は、発行体の普通株式に転換するオプションを提供し、企業の成長と株価上昇の恩恵を享受することを可能にすることで、特に強気市場においてポートフォリオのリターンを高めることが可能であると考えられます。
  • ダウンサイド・プロテクション:転換社債には債券のようなフロアがあり、発行体が存続する限り、将来の利子と元本の支払いに基づく最低価値が保証されています。これにより、発行体の株価が下落した場合でも、投資家は大きな損失から保護され、弱気市場でのポートフォリオの損失は限定されます。
  • 資本効率:転換社債はソルベンシーⅡの資本ガイドラインで優遇されており、保険会社はより低い資本要件で株式並みのリターンを達成することができます。このため、資本配分を最適化するための投資先として、転換社債は魅力的です。

(注)上記の見解は作成時点における運用チームの見解等であり、将来の経済・市場環境の変動及び将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。

転換社債の価格変動の仕組み

出所:マニュライフ|CQS インベスメント・マネジメント。上図は例示のみを目的としています。

一方で、転換社債には、投資家が認識すべき以下のような潜在的リスクもあります。転換社債の構造によってリターン特性が異なるため、その投資が構造上可能なパフォーマンスを発揮するためには、慎重な銘柄選択とファンダメンタルズ・リサーチが不可欠であり、特に、株価が低迷した場合に債券の下値が維持されることが期待されます。

  • 信用リスク:発行体が予定した元本や利息の支払いができなくなる場合に発生します
  • 金利リスク:伝統的な債券と同様に、転換社債の価格は金利上昇によってマイナスの影響を受ける可能性があります。
  • 株式リスク:株式価格が転換価格に達しない場合、転換オプションの魅力は低下します。
  • 流動性リスク:市場の状況によっては、転換社債は社債よりも流動性が低い場合があります。

高まる転換社債の魅力

転換社債の発行は2023年に前年比でほぼ倍増し、そのペースは2024年にも加速しています。プライマリー市場には豊富な投資機会が存在し、投資対象も拡大しています。発行はさまざまなセクターや地域に分散しているため、投資対象の多様化が進み、効果的なポートフォリオの構築が容易になっています。また、発行の増加によりバリュエーションも魅力的になっており、この資産クラスへの絶好のエントリー・ポイントになっていると考えられます。

(注)上記の見解は作成時点における運用チームの見解等であり、将来の経済・市場環境の変動及び将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。

転換社債の新規発行が世界市場で増加

出所:マニュライフ|CQS インベスメント・マネジメント、2024年10月31日現在。

転換社債が保険会社のポートフォリオに適している理由

保険ポートフォリオは通常、国債、社債、住宅ローン担保証券などの固定利付証券で構成されています。しかし、これらの証券には、低リターン、金利リスク、信用リスクなどの限界もあります。転換社債は、ポートフォリオに分散投資、アップサイドの可能性、ダウンサイド・プロテクションを加えることで、こうした課題を軽減するのに役立ちます。

転換社債と他の資産クラスとの比較

転換社債が提供できるさまざまなメリットについて整理したところで、次に、他の資産クラスと比較した場合のパフォーマンスについて考えてみたいと思います。私たちマルチ・アセット・ソリューション・チームが四半期ごとに行っている資本市場前提のデータを用いて、保険ポートフォリオにとって重要な複数の観点で転換社債のパフォーマンスを分析しました。

いくつかの異なる資産クラスについて、経済リスクとリターンの関係を5年間にわたってプロットしてみると、転換社債はリスクとリターンのバランスが非常によく、米国の小型株などの株式と比べてリスクが低い一方で、投資適格社債や国債などの伝統的な債券よりも高いリターンを提供している傾向にあることがわかりました。

リターンと経済的リスクの5年間のトレードオフ

出所:マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2024年10月31日現在。上図は例示のみを目的としています。

保険会社にとって、資本要件とリターンのバランスを取ることは極めて重要です。転換社債は株式と債券の性質を併せ持つことで、上記のような資本とリターンのバランスをとることに大きな効力を発揮します。転換社債は、ソルベンシーⅡの資本ガイドラインにおいて有利な扱いを受けており、保険ポートフォリオがかなり低い資本要件で株式並みのリターンを達成できるようになっています。

ソルベンシー・キャピタルの要件とリターンの関係を、いくつかの異なる資産クラスについて 5 年間でプロットしてみたところ、転換社債が両者のバランスに優れ、下図の中央に近い位置にあることが明らかになりました。これは、ハイイールド社債、投資適格社債、国債と比較したもので、これらはいずれも必要資本は低いものの、一般的にリターンは低くなります。逆に、欧州・アジア・極東(EAFE)や米国小型株などの株式戦略は、いずれも高いリターンを生み出しますが、必要資本水準は転換社債のほぼ2倍であり、EAFE株式や米国大型株はいずれもコストが高く、一般的にリターンは低くなります。

リターンと必要資本の5年間のトレードオフ

出所:マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2024年10月31日現在。上図は例示のみを目的としています。

最後に、一般的な保険ポートフォリオと同じように、資本要件と経済リスクを調整したリターンについて資産クラスを比較してみましょう。転換社債は、リターン、資本効率、経済リスクの間で有利なトレードオフを提供することで、再び説得力のあるケースとなりました。転換社債は、他の債券資産クラスよりも強力なリターンを提供しながらも、どの株式クラスよりも低い経済リスクを提供しました。この分析上も両指標ともEAFE株式と米国大型株を上回りました。

資本調整後リターンと経済リスクの5年間のトレードオフ

出所:マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2024年10月31日現在。上図は例示のみを目的としています。

保険ポートフォリオにおける転換社債の組み入れ効果

転換社債がもたらすリターンと経済リスクの有利な組合せを明らかにした上で、保険会社の債券セグメントにおける最適な配分戦略を検討したいと考えました。理想的な債券ポートフォリオには、グローバル国債、投資適格社債、ハイイールド社債が含まれる可能性があるため、当初は転換社債を除外し、これらの資産に基づいて効率的フロンティアを構築しました。

転換社債を除いた場合の効率的フロンティア

出所:マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2024年10月31日現在。上図は例示のみを目的としています。


転換社債を組み入れた場合の効率的フロンティア

出所:マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2024年10月31日現在。上図は例示のみを目的としています。

このポートフォリオに転換社債を組み入れると、リスクとリターンのバランスが改善しました。保険会社のリスク許容度と資本要件に応じて、転換社債を効果的に組み入れるために複数の戦略を採用することができます。3つの異なるオプションを詳しく見てみましょう。

  • オプション1:資産構成に転換社債を加えると、最適なポートフォリオと同じリターンを達成することができますが、リスクは減少することを示しています。
  • オプション2:最適ポートフォリオと同程度のリスクを取り、転換社債を追加することで、0.4%の追加リターンを生み出せることを示しています。
  • オプション3: わずかな資本コストを追加するだけで、さらに大きな利益を生み出せることを示しています。

3つのオプションに基づく結果

出所:マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2024年10月31日現在。上図は例示のみを目的としています。

魅力的なアルファ創出の機会

転換社債は資産クラスとしてリスク・リターンが魅力的なだけでなく、伝統的な資産クラスを補完するリターン・ドライバーによってアルファを生み出す機会を提供します。プライマリー発行が急増したことで、転換社債のユニバースが広がり、ポートフォリオ・マネージャーは、アルファの機会を最大化するためにエクスポージャーを選択的かつ動的に調整することができるようになりました。

特定の地域、セクター、信用度、デュレーション、投資プロファイルに合わせてカスタマイズすることができるため、SMAの場合は投資家の特定の目的に合わせることができます。

選択肢が広がるユニバース

出所:マニュライフ・インベストメント・マネジメント。上図は例示のみを目的としています。

まとめ~保険会社にとっての転換社債の魅力

私たちの分析が示すように、転換社債は、保険ポートフォリオに最適と思われる多くのメリットを提供することができます。転換社債を正しく選択し運用すれば、転換社債は債券と株式の両方のメリットを併せ持つ、ユニークで汎用性の高い負債証券となります。一般的な固定利付債券よりも強力なリターンを、多くの株式よりも低い資本要件で提供することができます。また、ポートフォリオの分散効果を高め、リターンを向上させ、ダウンサイド・プロテクションを提供することができます。

転換社債への投資にあたってはリスクや複雑さも伴うため、運用プロフェッショナルによる慎重な分析と選択が必要ですが、転換社債は、リターンを最適化し、リスクを効果的に管理する魅力的な投資ツールとなります。

図表のリターンはすべてユーロベース。各資産クラス数値は、マニュライフ・インベストメント・マネジメント独自のリサーチによるインプットに基づき構成されており、特定の指数およびファンド等の予測を意図したものではありません。

上記の見解・見通し・運用方針は作成時点における運用チームの見解等であり、将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。

リスクと手数料については、以下をご覧ください。https://www.manulifeim.com/institutional/jp/ja/jp-risks-and-fees-guide

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