中国クレジット・ウォッチ

フィオナ・チャン
アジア・クレジット・ヘッド (除く日本)

中国SOEがオフショア市場において

1998年以降初の事実上のデフォルト

中国天津市政府が保有するコモディティ商社、天津物産集団(Tewoo Group)は2019年11月25日、12億5,000万米ドル相当の社債に関する債務再編計画を発表しました1。この計画は債券保有者に最大64%の損失を受け入れるか、返済の遅延を認めるか、いずれかの選択を提案するものです。この発表により、同社は中国国有企業(SOE)としてオフショア・米ドル建て債券市場において1998年以降初の事実上の債務不履行となりました2。本稿では、天津物産集団の事実上のデフォルトが意味することを解説し、アジア・クレジットの投資家に与える幅広い影響について、アジア・クレジット・ヘッド(除く日本)のフィオナ・チャンが考察します。 

天津物産集団の事実上のデフォルトは3つの要因が重なった結果によるものと当チームでは見ています。その要因とは、(1) 同社は負債比率(レバレッジ)が高く、単独ベースでの信用力が低いこと、(2) 天津物産集団のコモディティ取引事業は戦略上の重要性が低いこと、(3) 天津市政府はその他の中国の1線都市(Tier1)と比較して債務水準が高いことです。 

天津物産集団の単独ベースの信用力が低いということは、同社が存続するには政府の救済措置に頼らざるを得ないということです。しかし、天津物産集団の事業は政府にとって戦略上の重要性が低く、天津市自体も多額の債務を抱えていることから、市政府が支援に乗り出す動機は低く余力も限られています。

持続不可能なほどの低いデフォルト率

中国のクレジット市場におけるデフォルトの可能性について、投資家の注目が集まっています。中国のSOEは負債比率(レバレッジ)が高いにもかかわらず、この2~3年、中国国内市場(オンショア市場)のデフォルト率は0.3%未満にとどまっています3。こうした低水準のデフォルト率を支えているのは主に暗黙の政府支援です。当チームでは、足もとの低いデフォルト率の水準は長期的には持続不可能な水準であると見ています。中央および地方両政府は今後、特に経済成長が低迷する局面では、財政難に陥ったSOEの救済をより選別的に行うと思われます。当チームの厳格な信用調査プロセスにおいては、政府による保有や暗黙の支援は当然に認められるものであるとは捉えていません。 

SOEの数の多さを考えると、政府の支援は今後一層選別的になると当チームでは考えています。当局は、モラル・ハザードを考慮して、経営難もしくは成長が見込めない企業の破綻を容認し、投資家に損失を受け入れさせる傾向を強めると思われます。

政府によるSOE支援の根拠となる要因

政府による暗黙の支援の可能性を評価する際、当チームでは2つの基本的事項を検討します。SOEの事業が中国経済にとって戦略上重要であるかという点と、デフォルトがシステミックな影響をもたらす可能性があるか、もしくはデフォルトの影響が大きく波及する可能性はあるかという点です。また、企業の財務全般の健全性と、中央および地方両政府に支援する意思と能力があるかという点についても評価を行います。当チームでは、競争環境が激しい業界、コモディティ化が進む事業分野、金融サービス関連分野で事業を展開する企業よりも、基幹産業や極めて重要なサービスを提供するSOEを選好します。 

  1. ブルームバーグ、2019年11月25日
  2. ブルームバーグ、2019年11月26日
  3. ゴールドマン・サックス、2019年10月18日現在
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