投資家は米国地方公共債の投資機会を逃してしまったのか?

アダム・ウェイゴールド
米国地方公共債チームヘッド
シニア・ポートフォリオ・マネージャー

デニス・ディシコ
米国地方公共債チーム
ポートフォリオ・マネージャー

米国地方公共債は、2023年10月後半以降に利回りが低下して株式並みのリターンを上げ、年末を迎えました。投資家は米国地方公共債市場における数十年に一度の絶好の投資機会を逃してしまったのでしょうか?私たちはそうではないと考えています。

米国地方公共債(以下、米国地方債または地方債)は過去数ヶ月間で急反発しました。元々の利回りが数十年来の高水準にあったことと金利が落ち着きを見せたことを背景に、ブルームバーグ地方債指数は金利がピークをつけた10月30日から年末までの間に8.86%上昇し、高格付け債から株式並みのリターンを得られる珍しい機会を投資家にもたらしました。

このシナリオが実現した今、次に考えるべきことは「今後はどうなるか」という点です。投資を手控えていた投資家は、米国地方債の投資機会を逃してしまったのではないかと自問しているかもしれません。米国地方債ミューチュアル・ファンド全体で見ると、2023年の年間を通じた流出額は280億米ドル近くに達しました1。これは2022年の流出額1,440億米ドルを大幅に下回るとは言え、多くの投資家が債券市場のボラティリティが落ち着くのを待って様子見を続けていることがうかがえます。マネー・マーケット・ファンド(MMF)の残高が6兆米ドル近くに達していることや、米国の銀行が2.1兆米ドルの譲渡性預金(CD)残高を抱えていることは、その証拠と言えるでしょう2。このような投資家にとって幸いなことに、米国地方債は今後1年間も好調なリターンを上げる可能性が高いと私たちは考えています。

米国地方債の利回りは依然として高い

過去数ヶ月の米国地方債の好調さを後押しした主な要因の1つは金利の大幅な低下であり、ブルームバーグ地方債指数の最低利回りは、直近のピークである4.50%から足元では3.22%まで低下しています。

米国地方債利回りは低下したが依然として高水準にある
最低利回り(2013年12月~2023年12月)

出所:ブルームバーグ、マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2023年12月31日現在。最低利回りとは、期限前償還(繰り上げ償還)など債券のオプション要素を考慮して算出した、考え得る最低の利回りを指します。ブルームバーグ地方債指数は米国の投資適格(IG)非課税債市場のパフォーマンスを示します。指数に直接投資することはできません。上記の過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

こうした最近の動きにもかかわらず、米国地方債の利回りは依然として過去10年間の平均を約41%上回っています。金利がここからどう動くかを予言することはできませんが、足元の課税換算利回りが今なお5%を上回っていることから、投資家は、今から非課税地方債に投資しても大きなインカムを得ることができると考えられます。

税収は堅調なファンダメンタルズを示唆

2023年には年間を通じて与信環境が緊縮化しました。この傾向はすぐには変わらないと思われるものの、米国地方債市場のファンダメンタルズは堅調さを保っています。このことは、緊縮的な金融環境がかなりの間続いたとしても、米国地方債市場を支えると予想されます。過去数年間にわたり、ほとんどの州と地方公共団体の税収は記録的な伸びを示してきました。合計税収額は2019年の同時期を24%上回っています。

税収は2019年以降に大幅に増加
州と地方公共団体の四半期毎の税収(2019年~2023年)

出所 :米経済分析局、Federal Reserve Economic Data、2024年1月4日現在。上記の過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

また、特に景気が減速するか、リセッション(景気後退)入りした場合、州および地方公共団体によって税収に大きなばらつきが生じることが予想されます。税収のうち、売上税や固定資産税への依存度が高い州や地方公共団体は、所得税への依存度が高いところと比べ、底堅さを維持すると思われます。過去を振り返ってみても、売上税や固定資産税は景気に左右されにくい傾向にあります。クレジット・リサーチを重視するアクティブ運用会社は、税収のばらつきを利用して投資機会を見出すことができるでしょう。

スプレッドの縮小がリターンを拡大する可能性

米国地方債を後押しすると思われるもう1つの要因は、クレジット・スプレッドが市場のファンダメンタルズとやや乖離した状態が続いており、特に格付けの低い債券でその傾向が強く見られることです。

2023年の大半を通じて米国地方債のスプレッドは景気後退の可能性を織り込み、足元のスプレッドは5年平均を小幅に上回る水準まで拡大しています。BBB格以下の米国地方債のスプレッドが縮小した場合、今後1年間にトータル・リターンは押し上げられる可能性があります。

BBB格の米国地方債のスプレッドは5年平均を上回っている
最低利回りのスプレッド(2018年1月~2023年12月)

出所 :ブルームバーグ、マニュライフ・インベストメント・マネジメント、2023年12月31日現在。最低利回りのスプレッドは、AAA格の地方債と比較。上記の過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

またテクニカル要因も今後12ヶ月のスプレッドの縮小をもたらす可能性があります。実際に多くの投資家はまだ様子見姿勢を続けているように思われるものの、短期金利が正常化すれば、そうした投資家もいずれ投資先を物色するようになるでしょう。私たちは、少なくともそうした資金の一部は再び米国地方債に流入すると考えています。また2024年には、高利回りの地方債を中心に、新発債の発行額が平均を下回ると予想されます。こうしたテクニカル要因とファンダメンタルズ要因はいずれも、今後1年間の米国地方債市場を支える可能性があります。

今日の不透明な市場環境において、投資家が資金を振り向けるのは、比較的高格付けの地方債となるでしょう。しかし地方債に対して臨機応変なアプローチを取ることのできるポートフォリオ・マネージャーは、BBB格以下の地方債から、より多くのトータル・リターンを得られる可能性があります。

まとめ

2023年末の米国地方債市場は好調な絶対リターンを記録したとは言え、私たちは2024年を見通すに当たり、今後も更なる投資機会が存在すると考えています。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めサイクルが終わりに近づき、金利がある程度安定し始めた今、様子見を止めて米国地方債市場に戻る投資家は増加すると予想されます。しかしここ数ヶ月の動向から判断すると、投資家にとって、依然として高水準にある利回りや堅固なファンダメンタルズを利用できる米国地方債投資の検討は、今行っても早すぎることはないでしょう。

 

  1. クレジットサイツ、2023年12月29日現在
  2. S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス、2023年4月1日(利用可能な最新のデータ)

リスクと手数料については、以下をご覧ください。https://www.manulifeim.com/institutional/jp/ja/jp-risks-and-fees-guide

  • 本資料は、海外グループ会社の情報を基にマニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「当社」といいます。)が作成した情報提供資料です。
  • 参考として掲載している個別銘柄を含め、当社が特定の有価証券等の取得勧誘または売買推奨を行うものではありません。
  • 本資料は、信頼できると判断した情報に基づいておりますが、当社がその正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 本資料の記載内容は作成時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
  • 本資料のいかなる内容も将来の運用成果等を示唆または保証するものではありません。
  • 本資料に記載された見解・見通し・運用方針は作成時点における当社の見解等であり、将来の経済・市場環境の変動等を示唆・保証するものではありません。
  • 本資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、その開発元または公表元に帰属します。
  • 本資料の一部または全部について当社の事前許可なく転用・複製その他一切の行為を行うことを禁止させていただきます。

 

マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第433 号

加入協会: 一般社団法人 投資信託協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会 一般社団法人 第二種金融商品取引業協会

 

世界的なパンデミックなどの公衆衛生危機は、市場のボラティリティの大幅な上昇、証券取引の停止等の原因となり、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界の経済活動に深刻な打撃を与えています。将来、発生する可能性のある公衆衛生危機、およびその他のエピデミックやパンデミックは、現時点では必ずしも予測可能ではない影響をグローバル経済に与える可能性があります。公衆衛生危機は、既存の政治的、社会的、経済的リスクを悪化させる恐れがあります。こうした事象はポートフォリオのパフォーマンスに悪影響を与え、投資に損失が生じる可能性があります。

投資には、元本割れなどのリスクが伴います。金融市場は変動しやすく、企業、産業、政治、規制、市場又は経済の変化に応じて乱高下することがあります。エマージング市場での投資に関しては、これらのリスクはより大きくなります。為替リスクとは、為替レートの変動がポートフォリオの投資の価値に悪影響を及ぼすことがあるというリスクです。

掲載されている情報は、特定の人に係る適合性、投資目的、経済状態又は特定のニーズを考慮したものではありません。お客様自身の状況にどのような種類の投資が適しているかどうかを検討し、必要に応じて専門的アドバイスを求めることをお勧めします。

本資料は、利用者に関係する法域に適用される法令等に基づき受領を許可された者のみの利用に供することを目的として、マニュライフ・インベストメント・マネジメントが作成したものです。本資料に掲載された見解は、公表時におけるマニュライフ・インベストメント・マネジメントの見解であり、市場環境その他の状況に基づき変更される場合があります。本資料に掲載されている情報及び/又は分析は、信頼性があると思われる情報源から入手したものですが、マニュライフ・インベストメント・マネジメントは、当該情報及び/又は分析の精度、正確性、実用性又は完全性について何らの表明も行わず、当該情報及び/又は分析を使用したことによる損害について一切責任を負いません。本資料の情報には、将来の事象、目標、運用哲学その他の予想に関する予測や見通しについての記述が含まれていることがありますが、いずれの情報も表示されている日付時点での最新の内容です。本資料における情報(金融市場の動向に関する説明など)は現在の市況に基づいていますが、現在の市況は今後の市場での出来事その他の理由によって変動し、置き換えられる可能性があります。マニュライフ・インベストメント・マネジメントは、かかる情報を更新するいかなる責任も負いません。

マニュライフ・インベストメント・マネジメント若しくはその関連会社、又はマニュライフ・インベストメント・マネジメント若しくはその関連会社の取締役、執行役若しくは従業員のいずれも、本資料の情報を信頼して行動し又は行動しなかった人が直接又は間接的に被った損失、損害その他の結果に関する責任を負うものではありません。全ての見解及び解説は、一般的な性質を有するように意図されており、現時点の関心事に資するためのものです。これらの見解は有用であると考えていますが、税務、投資又は法務に関する専門的アドバイスに代わるものではありません。お客様固有の事情につきましては、お客様自身が適切な専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。マニュライフ若しくはマニュライフ・インベストメント・マネジメント又はマニュライフ若しくはマニュライフ・インベストメント・マネジメントの関連会社若しくは代表者のいずれも、税務、投資又は法務に関するアドバイスを提供するものではありません。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。本資料は、もっぱら情報提供を目的として作成されており、有価証券の売買又は投資戦略の採用につき、マニュライフ・インベストメント・マネジメント又はその代理人が推奨したり、専門的アドバイスを提供したり、申込み又は勧誘したりするものではありません。また、マニュライフ・インベストメント・マネジメントが管理するファンド又は口座における取引の意図を示すものでもありません。いかなる市場環境においてもリターンを保証し又はリスクを排除する投資戦略又はリスク管理手法はありません。分散投資又はアセット・アロケーションによって、いかなる市場においても、利益が保証されることはなく、損失から保護されることもありません。別途示している場合を除き、全てのデータの出所はマニュライフ・インベストメント・マネジメントです。

 

マニュライフ・インベストメント・マネジメントについて

マニュライフ・インベストメント・マネジメントは、Manulife Financial Corporationのグローバルな資産運用ビジネス部門です。私たちは150年超にわたり、スチュワードシップ責任に則って、年金基金、機関投資家、個人投資家の皆さまに包括的な資産運用ソリューションをご提供しています。資産運用における私たちの専門的なアプローチには、債券、株式、マルチアセット及びプライベート・アセットの各運用チームが提供する高度に差別化された戦略があり、それらに加えて、私たちのマルチマネジャー・モデルを通じて特色ある独立系資産運用会社の戦略へのアクセスも可能です。

これらの資料は、有価証券その他の規制当局に審査及び登録されていませんが、以下のマニュライフ・グループの会社がそれぞれの法域で適宜配布することもあります。マニュライフ・インベストメント・マネジメントに関する追加情報については、次のURLに掲載されています。www.manulifeim.com/institutional

オーストラリア: Manulife Investment Management Timberland and Agriculture (Australasia) Pty Ltd, Manulife Investment Management (Hong Kong) Limited.  カナダ: Manulife Investment Management Limited, Manulife Investment Management Distributors Inc., Manulife Investment Management (North America) Limited, Manulife Investment Management Private Markets (Canada) Corp. 中国: Manulife Overseas Investment Fund Management (Shanghai) Limited Company. 欧州経済領域(EEA): アイルランド中央銀行の規制下にあるManulife Investment Management (Ireland) Limited 香港特別行政区: Manulife Investment Management (Hong Kong) Limited. インドネシア: PT Manulife Aset Manajemen Indonesia. 日本:マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社 マレーシア: Manulife Investment Management (M) Berhad 登録番号:200801033087 (834424-U) フィリピン: Manulife Asset Management and Trust Corporation. シンガポール: Manulife Investment Management (Singapore) Pte. Ltd.(会社登記番号:200709952G)韓国:Manulife Investment Management (Hong Kong) Limited.  スイス: Manulife IM (Switzerland) LLC. 台湾: Manulife Investment Management (Taiwan) Co. Ltd.  英国:Financial Conduct Authority (FCA) 規制下にあるManulife Investment Management (Europe) Limited. 米国: John Hancock Investment Management LLC, Manulife Investment Management (US) LLC, Manulife Investment Management Private Markets (US) LLC,  Manulife Investment Management Timberland and Agriculture Inc. ベトナム: Manulife Investment Fund Management (Vietnam) Company Limited.  

Manulife Investment Management. All rights reserved. Manulife Investment Management及びMのデザイン、並びにManulife Investment ManagementとMのデザインの組み合わせは、The Manufacturers Life Insurance Companyの商標であり、同社のみならず、ライセンスに基づき同社の関連会社にも使用されています。