2024年米国債券市場見通し:債券市場の先行き不透明感は残るものの・・・

ハワード・グリーン
米国債券コア・米国債券コアプラス戦略共同ヘッド
シニア・ポートフォリオ・マネージャー

ジェフリー・ギブン
米国債券コア・米国債券コアプラス戦略共同ヘッド
シニア・ポートフォリオ・マネージャー

コナー・ミナー
米国債券コア・米国債券コアプラス戦略
ポートフォリオ・マネージャー

米国金利が急激に変動し、債券市場のボラティリティは高い状況が続く中、投資家は強弱様々な経済指標を消化しながら、経済成長や中央銀行の金融政策の将来の方向性を確認しようとしています。マニュライフ・インベストメント・マネジメントの米国債券コア、米国債券コアプラス戦略の共同ヘッド兼シニア・ポートフォリオ・マネージャーのハワード・グリーンとジェフリー・ギブン、ポートフォリオ・マネージャーのコナー・ミナーは、ソフトランディングか景気後退かにかかわらず、米国の中長期債が株式や短期債に比べて魅力的な投資機会を提供すると考えています。

過去最悪とも言える2022年を経て、投資家はポートフォリオの中で安定した資産クラスとされる債券の回復を期待していたでしょう。残念ながら、2023年に入っても米国の中長期債は引き続き下落圧力を受けており、このままいけばブルームバーグ米国総合債券指数は3年連続のマイナスリターンに沈む可能性があります。

債券市場が引き続きマイナスリターンとなるかどうかはまだ分かりませんが、強弱双方の経済指標によって先行きの金利の方向性や経済状況に関する不確実性は高まっています。この不透明な見通しの中、債券市場ではボラティリティの高い状況が継続していますが、中長期債は非常に魅力的であると考える理由があります。

金利のボラティリティ拡大が割安な投資機会を創出

米連邦準備制度 (Fed)は長く続いたゼロ金利政策から急速かつ大幅に姿勢を転換し、政策金利であるFFレートは2001年以来の高水準まで上昇しました。この急激な金利上昇は、債券市場全体の重石となっています。金利と債券価格の動きは逆相関であるため、様々な債券セクターにおいて、大きな価格下落を経験することになりました。

過去数年間、債券投資家にとっては厳しい環境が続きましたが、金利がこれだけ上昇してきたことは、逆に将来のリターンに対してはポジティブな兆候であるとも言えます。まず、債券投資家は今後10年、あるいは更に長い投資期間の利回りを、足元の高い水準で確定させることが出来ます。加えて、債券価格はこの数年で大きく下落したため、様々な債券セクターでは過去平均の価格よりも低い水準で投資することが出来ます (図1)。

図 1: 過去平均から大きく下に位置する債券価格水準

出所:ファクトセット、2023年9月30日時点。米国投資適格社債:Bloomberg U.S. Corporate Investment Grade Index、米国MBS:Bloomberg U.S. Aggregate Securitized Mortgage-Backed Securities (MBS) Index、米国国債/政府債:Bloomberg U.S. Aggregate Government/Treasury Index、米国ハイイールド社債:Bloomberg U.S. Corporate High Yield (HY) Bond Index。指数に直接投資することはできません。 過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。

つまり、米国債券コア、あるいはコアプラス戦略を含めて、米国債券への投資は、今後の経済見通しの悪化やそれに伴い金利が低下する場合、高い利回り(インカム)と価格上昇(キャピタル)という両面からリターンを獲得しえる稀な投資機会であることを意味します。

高い利回りが再び焦点に

足元の債券市場は、長く続いた低金利環境の後の急激な金利上昇によって、株式市場に対しても魅力的なバリュエーションとなっています。これは特に景気後退懸念が実現する場合に当てはまりますが、経済見通しが比較的安定し、金利が長期間、高い水準に維持される場合でも、債券利回りは現在の5%程度の範囲で動くことが想定されます。この水準は投資家にとって魅力的なインカム水準であると言えます。

上述したように、投資開始時点の利回りが高いことはその後のトータルリターンの重要な決定要因となるため、現在の利回り水準は、見逃すべきではない魅力的な機会を提供していると思われます。

図2: Fedの引き締めサイクルの終了は、株式よりも中長期債のリターンが高まる局面

出所:eVestment、セントルイス連邦準備銀行、ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメント。データは2023年9月30日時点。S&P500指数は、米国の大手企業500社の株価パフォーマンスを表します。ブルームバーグ米国総合債券指数(Bloomberg U.S. Aggregate Bond Index) は、米国投資適格債のパフォーマンスを表し、国債、ABS、社債等を含みます。指数に直接投資することはできません。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。

ポートフォリオでは、投資家のリスク許容度とリスク量を一致させるように幅広い資産クラスへ分散を行うべきですが、上述のような見通しの基では債券へのアロケーションを戦術的(タクティカル)に増やすことが望ましいと考えます。

デュレーションをどのように考えるか?

債券セクターの中では、私たちは短期債に比べて中長期債により魅力的な投資機会があると考えています。2023年は金利が急速に動いた中で、足元の利回り水準を確定させておくことは大きな利点であり、短期債やマネーマーケット商品への投資で起きうる再投資リスクを避けることが可能です。

図 3: 高いボラティリティを示した2023年の米国債利回り
米国10年債利回り

出所: 米国財務省、2023年11月13日時点

歴史が教えるとおり、債券市場はしばしばFedが行動するより前に動きます。投資家は金融政策の転換を予期し、その前に投資行動を起こそうとするからです。また、金融政策の引き締めは徐々に進む一方で、一度金利を引き下げ始めると、中央銀行は速やかに行動する傾向があることも重要な点です。

金利水準がどのレベルで頭打ちとなるかはまだ定かではありませんが、投資家は現金を多く保有しておくリスクを軽視すべきではないと考えます。なぜなら、過去を振り返ると金融政策の転換局面で金利が低下するケースが多く、デュレーションを長期化した戦略の恩恵を享受できなくなるからです。

市場の不確実性が高まる局面でのアクティブ運用の重要性

債券市場のボラティリティが高く、経済見通しも依然として不透明な中、アクティブ運用は、ポートフォリオマネージャーが市場の変化に対応する柔軟性を持つことで、大きな付加価値を提供しえます。

逆イールドカーブの継続やネガティブな景気先行指標など、景気後退の兆候は多く発せられています。労働市場など一部の経済指標は驚くほど底堅いですが、戦略上、債券セクターの中ではデフェンシブな(景気サイクルに左右されにくい)ポジションを構築することが適していると考えます。

投資機会の一例として、エージェンシーモーゲージ債(MBS)が挙げられます。これらは、米国政府機関、政府支援機関の保証によって高い信用力を有する一方で、依然として一定の信用リスクを伴うため、クレジットスプレッドを享受することができます。他のクレジット関連市場と同様、エージェンシーMBSも過去数四半期においてスプレッドの拡大が見られたことで相対的な割安感が高まっています。また、エージェンシーMBSのアロケーションを多くすることで、収益性や流動性を落とすことなくポートフォリオ全体の格付け、クオリティを高めることができます。

米景気減速の可能性を考慮して、私たちは米国債に対してもポジティブな見方をしています。過去数か月において、様々なテクニカルな要因-フィッチによる米国債の格下げ、分断された政治状況における政府機関の閉鎖リスクの高まり、海外からの投資需要減退、米財務省による国債発行増大懸念等-によって米国債利回りは上昇しました。これらの要因は短期的には継続的な金利のボラティリティ上昇に繋がるかもしれませんが、エージェンシーMBSや米国債といったセクターのファンダメンタルズ(基礎的条件)を変えるものではないでしょう。 

社債市場における投資機会

景気見通しの悪化に伴ってクレジットスプレッドが拡大する場合、社債市場はアンダーパフォームすると考えます。しかし、業種間でバリュエーション格差があり、社債市場にも妙味のある投資機会が存在します。金融機関、スーパーリージョナルバンク(大規模地銀)の発行する債券は私たちの考える価値の高い投資対象の一例です。十分な自己資本や貸出し基準の厳格化が、健全な資産クオリティ等、信用力を支える要因となると判断しています。公益セクターも、過去対比でバリュエーションが割安に放置され、投資妙味の高い業種であると考えています。

攻撃は最大の防御です。過去数四半期にわたり低格付け企業や景気敏感セクターの社債が予想以上に堅調に推移してきましたが、私たちは慎重にクオリティや流動性に焦点を当てたポートフォリオを維持する方針です。数年ぶりの高い利回り水準を背景に、マニュライフ・インベストメント・マネジメントの米国債券コアあるいはコアプラス戦略における戦略的な中長期債へのポジションは今後のリターンに寄与するものと考えています。

リスクと手数料については、以下をご覧ください。https://www.manulifeim.com/institutional/jp/ja/jp-risks-and-fees-guide

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世界的なパンデミックなどの公衆衛生危機は、市場のボラティリティの大幅な上昇、証券取引の停止等の原因となり、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界の経済活動に深刻な打撃を与えています。将来、発生する可能性のある公衆衛生危機、およびその他のエピデミックやパンデミックは、現時点では必ずしも予測可能ではない影響をグローバル経済に与える可能性があります。公衆衛生危機は、既存の政治的、社会的、経済的リスクを悪化させる恐れがあります。こうした事象はポートフォリオのパフォーマンスに悪影響を与え、投資に損失が生じる可能性があります。

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