新時代の農地投資で精密農業が果たす役割

キース・バルター
マネージング・ディレクター、エコノミック・リサーチ

ジャスプリート・ オーレーク
シニア・ナチュラル・リソース・エコノミスト

ウェイイー・ツァン、Ph.D.
シニア・アグリカルチュラル・エコノミスト

新世代の農業システムは、収穫量の向上とコスト削減という投資家の一般的な目標を満たしつつ、気候変動への適応にも有効です。

農業テクノロジー(アグテック)はこの数十年間に飛躍的な進歩を遂げ、収穫量の向上と水や肥料など投入物の効率化に大きく寄与しました。近年、米国の農業生産性の動向は様々な要因によって変動し、それが市場の反応や価格動向に大きく反映されています1。今後は、収穫量の伸びの鈍化が予想されています2。足元での農産物価格と農業従事者の所得の回復を背景に、精密農業を含む新しいアグテック分野への投資の可能性が開かれています。新世代の農業システムは、収穫量向上とコスト削減という従来の目標のみならず、気候変動への適応を追求する上でも有効です。

気候変動リスクの認識が広まるにつれて不確実性が高まり、収穫量の増加傾向が続くという見通しに陰りが生じています。持続可能な食料確保を実現できるかどうかは、農業システムの効率性と耐久性を向上させる精密農業技術の導入に大きくかかっています。

精密農業による新たな水準の効率化

アグテックとは、農業、園芸、養殖にテクノロジーを使用することです。精密農業はアグテックの重要な要素であり、資源を最大限効率的に使用し、投入物(水、肥料、種、除草剤、殺虫剤)の使用を減らすためのツールとプロセスの開発と改良に重点を置いています。GPSを利用した土壌や収穫量のマッピング、レーザー技術を用いた整地用機械、GPSによるトラクター誘導システム、可変作業技術といった精密農業の技術と機器によって農業従事者は作業を極めて高い精度で調整でき、新たな水準での高い効率性を実現できます。

水の安定供給とコストは、米国の作物増産を成功させるために必要な中心的な課題です。特に水が制約されている乾燥地域や、それ以外の地域でも降雨量が少ない時期には重大な問題となります。米国の灌漑農地は1890年の300万エーカー未満から、2017年には5,800万エーカーに拡大し、灌漑農地は米国の耕作地全体の24%を占めました3。2017年に灌漑農地のうち最大の作付面積となったのはトウモロコシと大豆で、それぞれ全体の21%と16%を占めました。この数十年間におけるこうした灌漑農地の大幅拡大を可能にしたのは、灌水技術の発達でした。米国では1969~2017年に、灌漑用水量の平均が1エーカー当たり2.0エーカー・フィートから1.5エーカー・フィート未満にまで減少しました(注:1エーカー・フィートは、1エーカーの面積を1フィートの深さで覆うのに必要な水量)4

耕作地全体を水で満たす湛水方式のような重力式灌漑方式から圧力式灌漑(点滴灌漑やスプリンクラー灌漑)システムへの移行は、この30年間に灌漑農地の1エーカー当たりの水使用量を大幅に削減する上で重要な役割を果たしました。圧力式灌漑システムは1984年には灌漑農地全体の37%を占めるにすぎませんでしたが、2018年には72%まで増加しています。

米国における圧力式灌漑システムを使用する農地面積の拡大
重力式灌漑と圧力式灌漑を使用する米国の農地 

A bar chart to show the growth in U.S. farmland acres using gravity systems and pressurized systems  from 1984 to 2018.
出所:米国農務省(USDA)、2021年。重力式灌漑システムと圧力式灌漑システムを使用している米国の農地面積、西部17州、USDA経済調査局の1984~2018年のデータ、USDA農業統計局のFarm and Ranch Irrigation Survey(1984~2013年)およびIrrigation and Water Management Survey(2018年)。

灌漑技術と運営方法は継続的に進化し、向上しています。土壌などの状態に合わせて細かい精度で調整しながら潅漑する精密灌漑やGPS、モニタリングや自動化システムといった精密農業技術の進歩が現在の灌漑の効率性向上の原動力となっています5。点滴灌漑システムはこの数年で進化し、ポンプやバルブは個々の植物が必要とする水量に応じて手動または自動で調整できるようになりました。耕作地の土壌、肥料の供給、地形、作物の成長が場所によって差異があることから灌漑が必要とされ、精密灌漑システムによって生産者はこうした差異に対処し、水資源の保全と収穫量の向上を実現しています。

モニタリング装置のデジタル情報を遠隔操作によって収集・処理することで、灌漑プロセスの制御と効率性が向上します。GPSソフトウェア・プラットフォームと土壌水分計を併せて使用することで、耕作地独自の地形、土壌の水分、その他の耕作地の状況に関する情報収集が可能になります。気象状況に関するリアルタイム・データも、生産者が水管理についてより的確な判断を下す上で役立ちます。これらのシステムは、タブレットやスマートフォンによる遠隔操作が可能で、どこからでも効率的な水管理を行うことができます。

精密農業と第三の波

精密農業は、現代的な農業に生じている第三の波の重要な要素です。最初の波(農業の機械化)は1700年代に始まり、「緑の革命」と呼ばれる第二の波は1964年頃に到来しました6。この20年間における収穫量の驚異的な増加を可能にしたのは、遺伝子技術の向上や干ばつに強い品種の開発をはじめとする様々な要因ですが、農業生産における精密農業の進歩も重要な役割を果たしました。

トウモロコシや大豆の収穫量の増加は、精密農業導入の拡大と強い正の相関を示しています。米国のトウモロコシの平均収穫量は1997~2010年に28%上昇し、米国のトウモロコシ生産における精密農業の利用は同期間中に3倍以上に増加しました。同様に、米国の大豆の平均収穫量は10%上昇し、大豆耕作地における精密農業の導入率は5倍近く上昇しました。

大豆生産における精密農業の普及に伴う収穫量の増加(1996~2012年)
USDAによる大豆の収穫量と精密農業の導入率

Line chart to show the correlation between growing USDA soybean yields and the application of precision agriculture since 1996.
出所:Agricultural Resource Management Survey(ARMS:農業資源管理調査)farm financial and crop production practices、2021年8月30日。精密農業の導入には収穫量モニター、収穫量マップ、誘導システムの使用のほか、可変作業技術を使用した施肥、種まき、殺虫剤の使用が含まれます。データのない年の数値はARMS調査のデータ・ポイント間の推定平均値で代用しています。平均収穫量は3年間の移動平均です。USDAの大豆のデータは2012年に限定されています。

*ブッシェル:主に穀物の計量に用いられる単位。1ブッシェルは約35リットル。

 

トウモロコシ生産における精密農業の普及に伴う収穫量の増加(1997~2010年)
USDAによるトウモロコシの収穫量と精密農業の導入率

Line chart to show the correlation between growing USDA corn yields and the application of precision agriculture since 1996.
出所: ARMS farm financial and crop production practices、2021年8月30日。精密農業の導入には収穫量モニター、収穫量マップ、誘導システムの使用のほか、可変作業技術を使用した施肥、種まき、殺虫剤の使用が含まれます。データのない年の数値はARMS調査のデータ・ポイント間の推定平均値で代用しています。平均収率は3年間の移動平均です。USDAのトウモロコシのデータは2010年に限定されています。

灌水以外に幅広く導入されている精密農業の採用技術には、GPSを使用した農業機器の誘導システムやGPS土壌マッピング、可変作業技術を使用した水・肥料等の投入(施用)が含まれます。以前にUSDAが公表した2013年の米国におけるトウモロコシ、米、大豆、ピーナッツ耕作地の導入率は、GPS誘導システムが45~55%、GPS土壌マッピングが25%、変動作業技術(VRT)による肥料等の施用が20%でした7。GPSを活用した誘導システムは、過剰および過小散布を減らし、種まきを改善することによって生産コストの低減を可能にします。土壌マッピングはより実用的なデータを農業従事者に提供し、VRTは収穫量マップや土壌マップから得るGPSデータまたは誘導システムを使って、農業従事者が肥料、化学薬品、殺虫剤の施用をカスタマイズできるようにします。USDAは2013年のAgricultural Resource Management Survey(ARMS:農業資源管理調査)の発表以降、精密農業技術の導入率の最新データを公表していません。

また、2020 Precision Agriculture Dealership Surveyによる独自調査では、2017~2020年の米国の農場への精密農業の継続的導入についての情報を公表しています。USDAの調査と完全には一致していませんが、この調査の推定によると米国の農業者による3種類の技術の導入は継続的に拡大し、推定導入率は誘導システムが66%、土壌マッピングが52%、施肥のVRTが57%となっています8。今積極的に開発中で、今後導入される余地が大きい新技術として、ドローンによる画像データ取得、人工知能の利用、収穫と播種のロボティクスが挙げられます。

市場分野別の精密技術の利用拡大(テクノロジー小売企業による推定)

農業従事者の精密技術導入率

2017

2019

2020

誘導/自動操縦 60% 66% 66%
収穫量モニター - 69% 65%
散布範囲制御装置 - 56% 62%
地理情報システム(GIS)を利用した耕作地マッピング 45% 58% 57%
VRTによる施肥 38% 39% 57%
土壌のグリッドもしくはゾーン・サンプリング調査 45% 52% 52%
列ごとに動作切り替えが可能な種まき機 - 45% 46%
VRTによる石灰施用 40% 41% 44%
種まき機の可変圧力制御 14% 29% 31%
衛星画像または航空画像 19% 26% 31%
農場データのクラウド保管 14% 21% 29%
データ分析サービス 13% 26% 25%
品質の電子記録/マッピング - 20% 21%
トレーサビリティ      
VRTによる種まき 13% 19% 19%
多品種を土壌の性質に応じて植え付け可能な可変種まき機 7% 11% 17%
土壌の電気伝導率(EC)マッピング 9% 10% 14%
テレマティクス(車載センサー等とGPS・無線データ通信等を連動させ、データを送受信する仕組み) 5% 10% 13%
UAV(無人機)またはドローンによる画像データ取得 6% 9% 12%
施肥用Y型点滴 6% 10% 11%
VRTによる殺虫剤施用 3% 8% 7%
品質向上のための選択収穫 - 4% 7%
窒素管理のためのクロロフィル/グリーンネス・センサー 3% 5% 5%
VRTによる灌漑 - 4% 5%
収穫のロボティクス/自動化 - 0% 1%
除草のロボティクス/自動化 - 0% 0%
米国の農業従事者の導入率(%)。出所:2020 Precision Agriculture Dealership Survey、パデュー大学農業経済・作物栽培学学部。※「Y型点滴」は汎用的な栄養素施用システムです。

精密農業の環境へのメリット

米国の農業セクターでは精密農業技術の積極的な導入が今も進んでおり、農業は効率性向上とコスト削減を実現しています。さらに、精密農業の利用拡大は水、化石燃料、肥料、除草剤の使用量を減らすことで経済的メリット以外に、環境への恩恵ももたらします。肥料の最適な使用によって栄養素の流出を減らし、除草剤の使用を減らすことで既存の駆除法に耐性を持つ雑草の亜種の生育が抑制されます。温室効果ガス排出量も減少します。耕作地における農業機械の経路短縮を可能にするGPSによる誘導システムによって燃料が削減され、水不足問題には必要に応じた灌水を行うことによって対処します。

Association of Equipment Manufacturersが2021年に公表した報告書「The Environmental Benefits of Precision Agriculture in the U.S.」によると、精密農業技術の採用がさらに拡大すると、米国の年間作物生産量は6%増加し、同時に農業セクターにおける化石燃料の使用は16%削減、水使用量は21%削減されます9。同調査は、施肥の効率が14%、除草剤施用の効率が15%向上すると推定しています。精密農業によってもたらされる環境および気候変動の影響緩和効果は、将来の導入ペースの加速や、特に研究開発費をはじめとする政府の資金援助、潜在的な利用者へのトレーニング・プログラムや情報の収集および配布を正当化する論理的根拠の1つとなります。

先進的アグテックの導入拡大が将来の農業生産に不可欠

今後、アグテックの発展への投資と精密農業技術の導入拡大への継続的なコミットメントが、向こう20~30年に世界の農業業界が直面する課題に対処するための重要な要素になると思われます。精密農業技術は、農業従事者の財務体質のレジリエンシーを高め、地域の食料不足の問題解決に寄与すると同時に、環境を改善し、農業セクターの気候変動への適応をサポートする可能性を秘めています。

 

8月の世界農業需給予測(WASDE)によると、世界のトウモロコシ生産量は2021年度に過去最高に達する見通し
主要生産国におけるトウモロコシの予想年間生産量

Bar chart displays the growth in annual corn production estimates for Argentina, Brazil, China, the U.S., and the rest of the world.
出所:米国農務省(USDA)の世界農業需給予測(WASDE)、2021年8月現在。2020年は推定値、2021年は予想値。各年は年度ベース。トウモロコシの年度は米国が9月~8月、南アフリカは5月~4月、中国は10月~9月、アルゼンチンとブラジルのトウモロコシは3月~2月。トウモロコシ生産量のデータと予想はUSDA WASDEの報告書で毎月更新。

2021年度の世界のトウモロコシ生産量は、米国とブラジルの生産量が増加したことから、6%増加して過去最高の118,600万トンに達すると予想されます。2021年度(2021年9月~2022年8月)の米国のトウモロコシ生産量は、主に収量がトレンド水準を回復したことにより、4%増の37,500万トンと予想されます。ブラジルの2020年度(2021年3月~2022年2月)の生産量は、降雨量不足により二期作の作付けが遅れたことから、2019年度から15%減少し、8,700万トンになると推定されます。ブラジルの2021年度(2022年3月~2023年2月)の生産量は、作付面積の拡大と干ばつ状況からの回復により、35%増の11,800万トンと予想されます。アルゼンチンのトウモロコシ生産量は、2020年度(2021年3月~2022年2月)に8%減の4,800万トンとなった後、2021年度に収量が通常の水準まで回復したことから、生産量は9%増加して5,100万トンに達すると予想されます。中国の生産量は前年比微増の26,800万トンと予想されます(2021年5月~2022年4月の年度)。

8月のWASDEによると、世界の大豆生産量は2021年度に過去最高を更新
主要生産国における大豆の予想年間生産量

Bar chart displays the growth in annual soybean production estimates for Argentina, Brazil, the U.S., and the rest of the world.
出所:米国農務省(USDA)の世界農業需給予測(WASDE)、2021年8月現在。2020年は推定値、2021年は予想値。各年は年度ベース。大豆の年度は、米国が9月~8月、ブラジルは2月~1月、アルゼンチンは4月~3月。大豆生産量のデータと予想はUSDA WASDEの報告書で毎月更新。

2021年度の世界の大豆生産量は、前年比6%増の38,400万トンと予想されます。米国の大豆生産量は、作付面積と平均収量の増加により、5%増の11,800万トンと予想されます(2021年9月~2022年8月の年度)。ブラジルの生産量は、作付面積の拡大により、2020年度(2021年2月~2022年1月)が7%増の13,700万トン、2021年度(2022年2月~2023年1月)が5%増の14,400万トンと予想されます。ブラジル通貨の下落により、大豆生産の収益性は大幅に向上しています。アルゼンチンの大豆生産量は2020年度(2021年4月~2022年3月)に6%減の4,600万トンとなった後、2021年度(2022年4月~2023年3月)は13%増の5,200万トンになると予想されます。

米ドルは競合国通貨に対してわずかに下落
米ドルと農業国通貨の四半期為替レート(2006年第1四半期(1~3月期)を1として指数化)

Line chart displays the slight depreciation of USD versus the currencies of Australia, Canada, Brazil, Russian, and Argentina since approximately 2011.
出所:Macrobond、2021年6月。注:為替レートはMacrobond Financial ABによって日次更新

米国と貿易相手国との金利差が縮小したことから、2021年第2四半期(4~6月期)に米ドルは米連邦準備制度理事会(FRB)の貿易加重米ドル指数を基準としてわずかに下落しました。米ドルは対カナダドルで1.5%下落、対ロシアルーブルで3.3%下落しました。いずれの通貨もエネルギー市場の回復により上昇したものです。ブラジルレアルは、世界のコモディティ市場の回復とブラジルのGDP成長率の上昇により、第2四半期初めに予想を超える上昇となりました。オーストラリアドルは第2四半期に、足元の対米ドルでの各国通貨下落基調に追随したものの、オーストラリア準備銀行が7月初めにテーパリングを進める暫定措置を講じたことから、やや上昇しました。米ドルはアルゼンチンペソに対してもわずかに上昇しました。世界的に経済活動が再開し、効果的なワクチン接種が進み、競合するほとんどの通貨で金融政策は緩和的であることから、2021年は米ドルはボラタイルな状況が続くことが予想されます。

米国のトウモロコシ輸出は2021年第2四半期(4~6月期)も増加傾向
主要生産国のトウモロコシ輸出量の4四半期移動平均

a bar chart displays  the four quarter moving averages of the corn exports of Argentina, Brazil, and the U.S.
出所:Foreign Agricultural Services Global Agricultural Trade System、ブラジル経済省貿易統計(Comexstat)、アルゼンチン農産業省、2021年6月。アルゼンチンの農産物輸出は、アルゼンチン農産業省により月次公表。ブラジルの輸出データはComexstatにより月次公表。米国の輸出は米国国勢調査局により月次公表。輸出データは季節調整のため4四半期移動平均で算出。

世界の2021年第2四半期のトウモロコシ輸出量は、中国からの需要の増加と降雨量不足によるブラジルの供給逼迫を背景に増加しました。米国のトウモロコシ輸出量は前年同期比66%増、前期比12%増の1,700万トンとなり、輸出量の増加に最も大きく寄与しました。ブラジルの輸出量の4四半期移動平均は、前年に過去最高を記録したこと、また降雨量不足により2020年度にブラジルのトウモロコシ在庫が急減したことから、前年同期比で6%減、前期比5%減の900万トンとなりました。ブラジルでは、マットグロッソ州とパラ州を通り、複数の大手穀物貿易会社が拠点を置くミリティトゥバの河川ターミナルを終点とするハイウェイBR-163の舗装が、将来の穀物輸出の重要な追い風になります。アルゼンチンの輸出量の4四半期移動平均は前年同期比10%減少し、前期比でわずかに減少して800万トンとなりました。

米国の大豆輸出量は2021年第2四半期(4~6月期)に減少
主要生産国の大豆輸出量の4四半期移動平均

Bar chart displays the four quarter moving average of annual soybean exports for Argentina, Brazil, and the U.S.,
出所:Foreign Agricultural Services Global Agricultural Trade System、ブラジル経済省貿易統計(Comexstat)、アルゼンチン農産業省、2021年6月。アルゼンチンの農産物輸出は、アルゼンチン農産業省により月次公表。ブラジルの輸出データはComexstatにより月次公表。米国の輸出は米国国勢調査局により月次公表。輸出データは季節調整のため4四半期移動平均で算出。

米国の2021年第2四半期の大豆輸出量は前期比でわずかに減少しました。米国の大豆輸出量の4四半期移動平均は1,700万トンで、前期比で3%減少したものの、前年同期比で41%増加しました。ブラジルの大豆輸出量の4四半期移動平均は21,000万トンで、前期比でわずかに増加し、前年同期比では8%減少しました。中国の養豚業者の収益性低下により中国向け大豆輸出量は減少しました。アルゼンチンの大豆輸出量の4四半期移動平均は前期比39%減、前年同期比65%減の90万トンとなりました。アルゼンチンでは高インフレ経済の下での利益低下を避けるため、生産者による大豆の売り控えが広がっています。

中国からの需要により一年生作物価格は上昇
一年生作物価格

A line chart shows the recent growth in prices for row crop soybeans, wheat and corn, in response to Chinese demand.
出所:米国農務省(USDA)農業統計局(NAAS)、2021年6月。注:一年生作物の価格はUSDA NAASにより月次公表

2020年第2四半期(4~6月期)に米国のトウモロコシ、小麦、大豆価格はすべて、旺盛な中国向け輸出需要と世界的な供給の逼迫により上昇しました。トウモロコシ価格は前年同期比78%上昇して5.74米ドル/ブッシェルとなり、上昇幅は最大となりました。大豆価格は前年同期比73%上昇して14.40米ドル/ブッシェルとなりました。小麦価格は前年同期比32%上昇し、6.25米ドル/ブッシェルとなりました。

2020/2021年度は市場がバランスを探る中、ナッツ類の価格動向はまちまち
米国のナッツ類の年間平均生産者価格

This chart shows volatile tree nut prices, with prices for almonds, walnuts and pistachios dipping recently on production increases.
出所:米国農務省(USDA)農業統計局(NAAS)、2021年8月。2020年度のナッツ類価格はUSDAの推定値。年は年度ベース。永年作物の価格はUSDA NASSにより年次公表。当年のアーモンド、ピスタチオ、クルミの推定価格は、MIMTA(旧 ハンコック・ナチュラル・リソース・グループ)の情報源による作物年度の価格の年間変化率を使用して算出。輸出量に関するデータはUSDA経済調査局によるもの。

2020/2021年度はアーモンドが豊作であったため、価格は下落しました。2020年の米国のアーモンド生産量は推定30億ポンドで、2021年は32億ポンドと予想されています。2020/2021年度(2020年8月~2021年7月)は出荷量が好調であったにもかかわらず、価格は下落しました。2021年6月までの輸出量は、前年3月までの年度を31%上回りました。2020年度のクルミ価格は38%下落し、0.61米ドル/ポンドとなりました。USDAは、2020年度(2020年9月~2021年8月)のクルミの収穫高は前年同期比20%増加すると予想しています。クルミの輸出も好調で、2021年6月までの輸出は前年度から18%増加しました。ピスタチオの収穫高(殻付きベース)は10億ポンドの大台に到達しました(2020年度:2020年9月~2021年8月)。ナッツ類の中では比較的未成熟な市場であるピスタチオの価格は、生産量の増加が続いているにもかかわらず、上昇すると予想されます。ピスタチオ生産はやや集中的であるため、アーモンドやクルミ生産者よりも市場で価格が決定される傾向が高くなっています。2021年6月までのピスタチオ輸出量は前年度から14%増加しました。

2021年第2四半期(4~6月期)のNCREIF一年生作物インデックスのリターンと現金収入は増加
NCREIF一年生作物インデックスのトータルリターン(年率、%)

A bar chart to demonstrate the highest Q2 quarterly returns for NCREIF row crops since 2008.
出所:米国不動産投資受託者協会(NCREIF)、2021年6月。注:USDAの作物現金収入のデータはUSDA農業経済調査局によって2月、8月、11月の年3回公表。米国の暦年の予想は2月に第1回目が公表。8月の公表で前年の予想値が推定値に切り替わり、11月の公表で当年の予想値を更新。NCREIF農地投資のトータルリターンのデータは四半期ごとに公表。NCREIF一年生作物の四半期のトータルリターンを合算して年間トータルリターンを算出。NCREIFの年間リターンは四半期リターンの合算ではなく乗算により算出するため、グラフで表示されているトータルリターンはNCREIFが報告する年間トータルリターンと一致しない場合があります。

2021年第2四半期のNCREIF一年生作物インデックスのリターンは2.2%で、第2四半期のリターンとしては2008年以来最高となりました。好調な中国向け輸出需要と高水準の価格が農業者収入を押し上げました。USDAの農業者の収入・資産統計は、2021年の一年生作物現金収入が20%増加し、現金収入の伸び率は2007年以来最高になると予想しています。

 

  1. 米国農務省(USDA)農業統計局、2021年8月31日。
  2. "World Agriculture towards 2030/2050"、ESA Working Paper No. 12-03、FAO、2012年6月。
  3. Crop Acreage Data、USDA Farm Service Agency、2021年9月10日。
  4. Irrigation and Water Use、ERS-USDA、2021年9月6日。
  5.  "4 Important Ways Precision Agriculture is Impacting Irrigation"、PrecisionAg、2017年10月12日。
  6. "Digital agriculture: helping to feed a growing world"、Performance by Ernst and Young、2017年2月。
  7. "Precision Agriculture Technologies and Factors Affecting Their Adoption"、ERS USDA Amber Waves、2016年12月5日。
  8. 2020 Precision Agriculture Dealership Survey、CropLife Magazineおよびパデュー大学、2020年8月。
  9. "Study shows Precision Agriculture improves environmental stewardship while increasing yields"、CropLife、2021年2月1日。

リスクと手数料については、以下をご覧ください。
https://www.manulifeim.com/institutional/jp/ja/jp-risks-and-fees-guide

  • 本資料は、海外グループ会社の情報を基にマニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社(以下「当社」といいます。)が作成した情報提供資料です。
  • 参考として掲載している個別銘柄を含め、当社が特定の有価証券等の取得勧誘または売買推奨を行うものではありません。
  • 本資料は、信頼できると判断した情報に基づいておりますが、当社がその正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 本資料の記載内容は作成時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
  • 本資料のいかなる内容も将来の運用成果等を示唆または保証するものではありません。
  • 本資料に記載された見解・見通し・運用方針は作成時点における当社の見解等であり、将来の経済・市場環境の変動等を示唆・保証するものではありません。
  • 本資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、その開発元または公表元に帰属します。
  • 本資料の一部または全部について当社の事前許可なく転用・複製その他一切の行為を行うことを禁止させていただきます。

 

マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第433 号

加入協会: 一般社団法人 投資信託協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会 一般社団法人 第二種金融商品取引業協会

 

世界的なパンデミックなどの公衆衛生危機は、市場のボラティリティの大幅な上昇、証券取引の停止等の原因となり、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界の経済活動に深刻な打撃を与えています。将来、発生する可能性のある公衆衛生危機、およびその他のエピデミックやパンデミックは、現時点では必ずしも予測可能ではない影響をグローバル経済に与える可能性があります。公衆衛生危機は、既存の政治的、社会的、経済的リスクを悪化させる恐れがあります。こうした事象はポートフォリオのパフォーマンスに悪影響を与え、投資に損失が生じる可能性があります。

投資には、元本割れなどのリスクが伴います。金融市場は変動しやすく、企業、産業、政治、規制、市場又は経済の変化に応じて乱高下することがあります。エマージング市場での投資に関しては、これらのリスクはより大きくなります。為替リスクとは、為替レートの変動がポートフォリオの投資の価値に悪影響を及ぼすことがあるというリスクです。

掲載されている情報は、特定の人に係る適合性、投資目的、経済状態又は特定のニーズを考慮したものではありません。お客様自身の状況にどのような種類の投資が適しているかどうかを検討し、必要に応じて専門的アドバイスを求めることをお勧めします。

本資料は、利用者に関係する法域に適用される法令等に基づき受領を許可された者のみの利用に供することを目的として、マニュライフ・インベストメント・マネジメントが作成したものです。本資料に掲載された見解は、公表時におけるマニュライフ・インベストメント・マネジメントの見解であり、市場環境その他の状況に基づき変更される場合があります。本資料に掲載されている情報及び/又は分析は、信頼性があると思われる情報源から入手したものですが、マニュライフ・インベストメント・マネジメントは、当該情報及び/又は分析の精度、正確性、実用性又は完全性について何らの表明も行わず、当該情報及び/又は分析を使用したことによる損害について一切責任を負いません。本資料の情報には、将来の事象、目標、運用哲学その他の予想に関する予測や見通しについての記述が含まれていることがありますが、いずれの情報も表示されている日付時点での最新の内容です。本資料における情報(金融市場の動向に関する説明など)は現在の市況に基づいていますが、現在の市況は今後の市場での出来事その他の理由によって変動し、置き換えられる可能性があります。マニュライフ・インベストメント・マネジメントは、かかる情報を更新するいかなる責任も負いません。

マニュライフ・インベストメント・マネジメント若しくはその関連会社、又はマニュライフ・インベストメント・マネジメント若しくはその関連会社の取締役、執行役若しくは従業員のいずれも、本資料の情報を信頼して行動し又は行動しなかった人が直接又は間接的に被った損失、損害その他の結果に関する責任を負うものではありません。全ての見解及び解説は、一般的な性質を有するように意図されており、現時点の関心事に資するためのものです。これらの見解は有用であると考えていますが、税務、投資又は法務に関する専門的アドバイスに代わるものではありません。お客様固有の事情につきましては、お客様自身が適切な専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。マニュライフ若しくはマニュライフ・インベストメント・マネジメント又はマニュライフ若しくはマニュライフ・インベストメント・マネジメントの関連会社若しくは代表者のいずれも、税務、投資又は法務に関するアドバイスを提供するものではありません。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。本資料は、もっぱら情報提供を目的として作成されており、有価証券の売買又は投資戦略の採用につき、マニュライフ・インベストメント・マネジメント又はその代理人が推奨したり、専門的アドバイスを提供したり、申込み又は勧誘したりするものではありません。また、マニュライフ・インベストメント・マネジメントが管理するファンド又は口座における取引の意図を示すものでもありません。いかなる市場環境においてもリターンを保証し又はリスクを排除する投資戦略又はリスク管理手法はありません。分散投資又はアセット・アロケーションによって、いかなる市場においても、利益が保証されることはなく、損失から保護されることもありません。別途示している場合を除き、全てのデータの出所はマニュライフ・インベストメント・マネジメントです。

 

マニュライフ・インベストメント・マネジメントについて

マニュライフ・インベストメント・マネジメントは、Manulife Financial Corporationのグローバルな資産運用ビジネス部門です。私たちは150年超にわたり、スチュワードシップ責任に則って、年金基金、機関投資家、個人投資家の皆さまに包括的な資産運用ソリューションをご提供しています。資産運用における私たちの専門的なアプローチには、債券、株式、マルチアセット及びプライベート・アセットの各運用チームが提供する高度に差別化された戦略があり、それらに加えて、私たちのマルチマネジャー・モデルを通じて特色ある独立系資産運用会社の戦略へのアクセスも可能です。

これらの資料は、有価証券その他の規制当局に審査及び登録されていませんが、以下のマニュライフ・グループの会社がそれぞれの法域で適宜配布することもあります。マニュライフ・インベストメント・マネジメントに関する追加情報については、次のURLに掲載されています。www.manulifeim.com/institutional

オーストラリア: Hancock Natural Resource Group Australasia Pty Limited, Manulife Investment Management (Hong Kong) Limited. ブラジル: Hancock Asset Management Brasil Ltda. カナダ: Manulife Investment Management Limited, Manulife Investment Management Distributors Inc., Manulife Investment Management (North America) Limited, Manulife Investment Management Private Markets (Canada) Corp. 中国: Manulife Overseas Investment Fund Management (Shanghai) Limited Company. 欧州経済領域(EEA)及び英国: Financial Conduct Authority (FCA) 規制下にあるManulife Investment Management (Europe) Limited、アイルランド中央銀行の規制下にあるManulife Investment Management (Ireland) Limited 香港特別行政区: Manulife Investment Management (Hong Kong) Limited. インドネシア: PT Manulife Aset Manajemen Indonesia. 日本:マニュライフ・インベストメント・マネジメント株式会社 マレーシア: Manulife Investment Management (M) Berhad(旧Manulife Asset Management Services Berhad)登録番号:200801033087 (834424-U) フィリピン: Manulife Asset Management and Trust Corporation. シンガポール: Manulife Investment Management (Singapore) Pte. Ltd.(会社登記番号:200709952G) スイス: Manulife IM (Switzerland) LLC. 台湾: Manulife Investment Management (Taiwan) Co. Ltd.  米国: John Hancock Investment Management LLC, Manulife Investment Management (US) LLC, Manulife Investment Management Private Markets (US) LLC and Hancock Natural Resource Group, Inc. ベトナム: Manulife Investment Fund Management (Vietnam) Company Limited.  

Manulife Investment Management. All rights reserved. Manulife Investment Management及びMのデザイン、並びにManulife Investment ManagementとMのデザインの組み合わせは、The Manufacturers Life Insurance Companyの商標であり、同社のみならず、ライセンスに基づき同社の関連会社にも使用されています。